コラム

COLUMNワキガは遺伝するというのは本当? 遺伝したら治療は必須?

ワキガ体質は親から子供に遺伝するものと聞いたことはないでしょうか。
これは事実で、ワキガは遺伝的な素養による側面が大きいため、親がワキガ体質である場合は高い確率で子供もワキガ体質となります。
なぜワキガが遺伝による影響を強くうけるのか、また実際に遺伝した場合にはどのようにケアや対策を行うべきなのかについて詳しく解説いたします。

ワキガの原因はアポクリン汗腺の発達

まず、なぜワキガが遺伝的な要素によってその体質になるかどうかが決まるのかというと、それにはワキガがどのような仕組みで発症するものなのかを知る必要があります。

ワキガは、ワキにあるアポクリン汗腺という器官から分泌されるタンパク質や脂質の多い分泌物(汗)が直接的な原因で、この汗を栄養として皮膚にいる常在菌が活動を行う際に、強い体臭の元となる物質を作り出すことでワキガ特有のツンとしたにおいが発生します。

アポクリン汗腺はワキの他にも外耳道や乳輪、肛門や外陰部といった部位に存在していますが、限られた部位にしか無いため、アポクリン汗腺からの分泌物によって強い体臭が生じるのはワキまたは外陰部周囲となります。
外陰部での体臭については「すそわきが」と呼ばれます。

汗を沢山かく=ワキガではない

注意が必要なのは、汗を沢山かく事がワキガの原因ではないという点です。
アポクリン汗腺は「汗腺」というように汗を分泌する器官ですが、この汗は前述の通りタンパク質や脂質を多く含んだもので、暑い時などに沢山かく水分の多い汗とは全く性質が異なっています。

水分が多い汗はエクリン汗腺という汗腺から分泌されるもので、99%が水分のものであり、この水分が蒸発する際の気化熱で体温を下げるという役割を持っています。
汗を沢山かくというと、通常このエクリン汗腺からの汗をイメージするかと思いますが、ワキガの原因はあくまでもアポクリン汗腺からの汗であって、エクリン汗腺からの汗が多くてもそれがワキガの体臭を作り出すわけではありません。
つまり、汗を沢山かく人がワキガ体質というわけではないのです。

また、汗そのものは無臭であるため「汗臭い」と表現されるニオイは実は汗そのもののニオイではありません。
汗臭いニオイについても、基本的には分泌された汗に含まれる脂質などが栄養となって皮膚の常在菌が繁殖し、ニオイの原因となる物質を作り出すことが原因となっています。

アポクリン汗腺が活発になるかどうかは遺伝的素養が大きく影響する

以上のようにワキガの原因はアポクリン汗腺からの分泌物にあるわけですが、アポクリン汗腺の発達や、活発さの程度については遺伝的な要素が大きく影響しています。

そして、実は日本人は世界の中でもこの「アポクリン汗腺が活発になる」という遺伝子を持っている割合が少ない人種である事や、文化的に「清潔さ」を重視するといった傾向が強いという点によって、ワキガが「よくないもの」と強く認識されやすいという側面があります。

日本や韓国、中国といった東アジア地域に分布するモンゴロイド系の人種は、アポクリン汗腺が活発になる遺伝子を持つ割合が少なくなっています。
日本人であれば遺伝的にワキガ体質の可能性があるのは多くて30%程度といわれており、半数以上はそもそもワキガ体質になる遺伝を持っていません。
一方で欧米系や中東、アフリカといった地域では、80%以上、場合によっては100%の割合でワキガ体質になる(アポクリン汗腺が活発になる)遺伝子を持っている状態であり、ワキガの体臭を持つ方が一般的であるために日本ほどワキガ体質が問題視されないという状況もあります。

ワキガの遺伝は「優性遺伝」

ワキガ体質は遺伝の影響を受けるものとご紹介しましたが、実はワキガ体質の遺伝は「優性遺伝」という、その性質が発現しやすい遺伝要素です。

優性遺伝を簡単に説明すると、まず私たちは父親と母親から半分ずつ遺伝子を受け継いでいるため、私たちの中には必ず2種類の遺伝情報があります。
その遺伝の中で、ワキガ体質を発生させる遺伝を「〇」、そうでないものを「×」と表現した場合、遺伝子のパターンは「〇〇」「〇×」「××」の3パターンになるのですが、この3つの内で実際にワキガ体質になる可能性があるのは「〇〇」と「〇×」の二つ。
このように、体質に強く影響しやすい遺伝を「優性遺伝」といいます。

前述のように遺伝は両親から受け継ぐ事になりますが、例えば両親のうちのどちらかがワキガ体質であり、片方がワキガ体質では無かった場合、受け継ぐ遺伝パターンは下記の通りです。

・ワキガ体質の親の遺伝情報が「○○」だった場合 →子供は必ず「〇×」となり、ワキガ体質になる
・ワキガ体質の親の遺伝情報が「〇×」だった場合 →子供は「〇×」か「××」となるため、半分の確立でワキガ体質になる
※ワキガ体質ではない親の遺伝情報「××」

つまり、両親のどちらかがワキガ体質の場合は計算上75%の確立で遺伝する可能性がある事になるのです。

また、同様の計算をすると両親のどちらともがワキガ体質であった場合は約94%の割合で遺伝する事となり、かなりの高確率であるといえるでしょう。

ワキガの体臭が出てくるのは思春期以降

ワキガは遺伝要素の影響を強く受けますが、生まれてきた子供がすぐにワキガの体臭となるわけではありません。
ワキガの原因であるアポクリン汗腺は性ホルモンの働きによって発達し活発となるため、実際に体質として表れるのは性ホルモンの分泌が始まる思春期(第二次性徴)以降となります。

この時期は特に周囲の目が気になりだすタイミングでもあるため、ワキガの体臭によって周囲との不破が生じるなどしやすい側面がある事もワキガの悩みが強くなりやすい要因といえるでしょう。

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体臭は遺伝だけで決まるわけではない

ここまでワキガの体臭は遺伝の影響を強くうけると解説しましたが、その一方で体臭の強さは遺伝で全てが決まるものでもありません。
実際に、日本人の30%程度はワキガの遺伝をもっていると解説しましたが、実際にワキガの体臭が生じている割合は10%程度であり、その中でも周囲にまで強い体臭が届いてしまうような中度から重度のワキガは10~30%程度と推測されています。

それでは遺伝以外にどのような影響から体臭が決まるのかというと、下記の通りです。

食生活の影響

日本人は元々体臭が少ないと言われていますが、これは食生活による影響も大きいと考えれています。
欧米のように肉食を中心とした食事は、アポクリン汗腺から分泌されるタンパク質や脂質の多い汗や、皮脂など体臭の原因となる分泌物の材料となるため、体臭が強くなる傾向にあります。
一方で日本人の元々の食生活は米を中心とした比較的低脂質なものであるため、体臭が強くなりにくい内容でした。
近年では日本人の食生活も欧米化して肉食や揚げ物が多くなっているため、これが体臭を強めている要因の一つと考えられています。

また、肉や揚げ物以外にもニンニクやスパイスといったニオイの強い食べ物は体臭に影響しやすく、ワキガ体質と組み合わさって体臭が強い状態になりやすいです。

食事は栄養のバランス良く摂取する事が大切ですが、なるべく肉や揚げ物などの脂っこい食品であったり、ニオイの強い食事を避けた方が体臭の予防によいでしょう。

強いストレス

アポクリン汗腺からの汗は、ストレスによっても分泌が促進されます。
そのため、強いストレスを抱えているとアポクリン汗腺からの汗が増加しやすく、体臭が強くなりやすいのです。

ストレスを避けて生活できるのであればそれが一番ですが、現実的には難しいと思いますので、出来る限りストレスをため込まないような生活習慣を目指しましょう。
特に重要なのは睡眠で、深く十分な時間の睡眠はストレスの緩和にとても効果的です。
逆に睡眠の量や質が不足すると心身にかかるストレスが解消しにくくなりますので、出来る限り十分な睡眠をとるようにするとよいでしょう。

喫煙や飲酒

喫煙や飲酒は、体臭を強くする原因の一つです。
喫煙や飲酒によって摂取する成分そのものが体臭に影響するだけではなく、ストレスを感じやすくなる事や毛細血管の縮小による代謝の低下なども含めて悪影響となりますので、体臭ケアのためには出来る限り控えておきましょう。

清潔さの維持

ワキガは汗を皮膚の常在菌が分解する事でニオイが生じるものですので、定期的に汗をふきとったり、殺菌を行って清潔な状態を保つ事によってニオイの発生を抑える事ができます。

ワキへのケアだけではなく、衣服についた汗なども菌が繁殖してニオイを作り出す原因となりますので、ワキ部分が汗によって黄色く着色してしまっているなどの状態であれば、しっかりとその汚れを落としておくこともニオイのケアに必要な対策となります。

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ワキガは治療する事ができる

ワキガは遺伝による体質からひきおこされるものですが、医療機関で治療を行う事で根本から症状を改善する事ができます。
その具体的な方法は手術などによってアポクリン汗腺を除去または破壊するというもので、ワキのアポクリン汗腺をなくしてしまえば、においの原因となる汗が分泌されなくなりますので体臭に悩む事もなくなります。

ワキガの悩みを根本的に解消する治療としては、大きく分けて「切る治療」と「切らない治療」があります。

切るワキガ治療

ワキガを治療する方法として、最も確実に効果がある方法は切開を伴う手術によるものです。
代表的な手術が「剪除法」と呼ばれるもので、これはワキの皮膚を切開して一度裏返しにしてから、医師が直接アポクリン汗腺などを目視確認しながら一つ一つ除去していくというものです。
直接汗腺を見ながら除去するので取り残しなどが生じにくく、最も確実に効果を得る事ができます。
一方の難点として、皮膚を一度裏返すなどするために術後にしっかりと皮膚と皮下組織をくっつけるための圧迫などを行う必要があり、少なくとも1週間程度は行動が制限されるようなダウンタイムが必要となる点です。

剪除法以外にもいくつかの術式がありますが、どれもダウンタイムが軽微となる点や治療にかかる時間が短くなるという利点がある一方で、原因であるアポクリン汗腺を徹底的に除去できるかどうかという効果の面では劣ってしまう面があるため、確実な効果を求めるならば剪除法が第一選択となります。

切らないワキガ治療

切開を行わずにアポクリン汗腺を破壊するという方法は、切開が無い分傷跡が目立つという事が無く、ダウンタイムが比較的楽であるという点から人気です。

具体的には古くはレーザー照射による方法から始まり、現在はマイクロ波を使用したものやRFを使用した機器での治療が中心となっていますが、どれも皮下の汗腺がある層に強い熱刺激を加えて汗腺の機能を破壊するという点では同じです。

注意点として、確かに熱のエネルギーで一定量の汗腺を破壊する事は可能ですが、一方で汗腺を残らず全て破壊できるかどうかという点では確証がなく、剪除法による手術と比べると効果の確実性がありません。
一定の割合で汗腺が破壊できていたとしても、残った汗腺から汗が分泌されていれば強いニオイの原因になってしまう事はありますので、やはり確実な効果を求めるのであれば剪除法を選択した方が良いでしょう。

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ワキガは早めに治療した方が良い?

遺伝的にワキガ体質である場合、なるべく早く治療をしたいと考える方が多いかと思います。
実際にクリニックに治療の相談をされる方の中には、中学生や高校生くらいの方が手術を希望されるケースも多くあります。

早い内にワキガを治療する事は当然可能ですが、注意しなくてはならない面もあります。

早い内に手術をしてもニオイが戻ってしまう可能性がある

人の体は思春期以降も成長を続け、成人する頃に成長が止まりますが、成長が止まるまでは体の様々な組織が次々と作られていく状態にあります。
そのため、早めにワキガの手術をしてしまうと、成長に合わせてアポクリン汗腺が新しく作られてしまい、大人になる頃にはニオイが再発してしまうという可能性が考えられます。
そうなると再度治療の必要が出てきてしまいますので、ニオイの再発についてはしっかりと考えておきましょう。

傷跡が気になりやすい

思春期の頃は周囲の目が気になりやすく、少しの傷跡でもコンプレックスとなってしまう可能性があります。
ワキガを剪除法で治療する場合では、なるべく傷跡が目立たないようにワキのシワにそって切開が行われますが、それでも1年程度は傷跡が見えれば治療をしたという事が分かってしまう可能性もあります。

成人するまでは手術以外の治療を選択するのもあり

ワキガの治療としては、アポクリン汗腺を完全に除去して原因を取り除くという方法以外にも、汗の分泌を抑制する事でニオイを防ぐという治療法があります。

ボトックス注射

ボトックス注射はアセチルコリンという神経伝達物質の働きを阻害する、簡単にいえば神経を麻痺させる治療法です。
ワキの汗腺に対して注射を行う事で、汗腺の働きを抑えてワキガの原因である汗の分泌を抑える事ができます。
効果は注射から数か月間で、定期的に注射を行う事でニオイを抑え続ける事が期待できます。

医療用制汗剤

市販の制汗剤は冷感などによって一時的に汗の分泌を止めるものですが、医療用の制汗剤では汗腺に蓋をしたり、汗腺の働きを麻痺させる事で数日間、汗の分泌を止める事ができます。
一度塗れば何日間かはケアをする必要がないため、小まめに対策をしなくて済むようになるという点が優れており、また利用がとても簡単という点も優れています。

こうした治療法は効果が一時的であるため根本的な解消とはなりませんが、どれも体への負担が少なく利用する事ができる方法であるため、思春期の間はこうした治療法を活用して、大人になってから手術で根本的な原因を解消するというのも一つの選択肢です。

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ワキガのお悩みはまず一度ご相談ください

ワキガは遺伝的な要因が強い症状ですが、日常でのケアによる軽減や治療を行う事で十分に対策を行う事ができます。
体臭にお悩みの方は、まずは一度クリニックまでご相談ください。
医師が体臭の状態やその原因などをしっかりと診察し、適切な対策方法をしるだけでも日々のケアが楽になりますし、不安は軽減されるはずです。
城本クリニックではワキガ治療に詳しい専門の医師が揃っており、治療のご相談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。

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本コラムの監修医師

1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック

医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹

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